阿佐ヶ谷ジャズストリート訪問

matsuuchi2006-10-28



デジタル技術が発達すればするほど、デジタル化できないものの価値が鮮明に見えてくることがよくありますが、音楽のライブ演奏というのは そのように非デジタル的価値が際立つものの一つだと思います。


知り合いのサックス奏者 (森田 修史さん) が出演していると聞いて、阿佐ヶ谷ジャズストリートというイベントに行ってきました。

  • 鈴木 勲 OMA SOUND。 久しぶりに見る森田氏はずいぶん かっこいいアニキになっておりました。 ところで、あの狂ったように暴れていたピアニストは誰だ? 客席の最前列で 4 - 5歳ぐらいの男の子たち2人がずいぶん集中してステージを見ていたけれど、「すげー、俺もやりたい」とか幼心に思っていたんだろうか。
  • 山下 洋輔。 今回のイベントで一番の有名人だけあって、客席は超満員。 ステージがなんと神社の境内 (阿佐ヶ谷神明宮(天祖神社)の神楽殿という建物)。 神楽殿の前ではかがり火が焚かれていて、異様に渋い雰囲気の中での演奏。 寺屋ナオ、という若いギタリストと一緒にやっていました。 これぐらい有名な人になると、「若手の売込みに名前を貸す」ような仕事も多いのかな。 客席には、小さい子連れのお母さんたちが水筒とお菓子を広げていたりして、神社の境内の雰囲気もあいまって昔ながらの「お祭り」空間が出現しておりました。
  • maiko。古いタイプのジャズというよりはフュージョンイージーリスニング的な要素も入ってる音楽かな、と思ったけど、そのまっすぐさに癒されました。 ステージでの演奏はとても完成度が高く、素敵です。 1st album を出したばかりだそうです。 これからもがんばってください。
  • 矢野 忠と青空ロマンス楽団。 和服とベレー帽という姿でウッドベースを弾いていた女の子、やたらにカッコよかったなあ。


阿佐ヶ谷の町を歩き回るのは これが初めてだったけど、こういうイベントがあると 短時間に町のいろいろな場所の表情を知ることができて便利です。 今回のイベントで、阿佐ヶ谷の小さな劇場 (芝居小屋) の存在や、「バラエティ会場」として参加しているいろいろなライブのお店のことを知ることができました。 こういうふうに町の宣伝をすることが主催者側の意図だと思うんだけど、この意図はかなり成功していると思います。 神社までもがこういうイベントに参加しているということは、きっと地域のつながりが濃い町なのかな、と思いました。


シアトルで映画館に行くと、映画が始まるまえに必ず "The language of film is universal." という短いメッセージ・フィルムが流れていました。 映画の言葉以上に、音楽の言葉も universal なんじゃないかな、と感じた一日でありました。




最近、経済のロングテール化の影響についてあれこれ考えるのですが、阿佐ヶ谷の町を歩きながら、リンクはいくつか見えたのですが あまり整理された絵になりませんでした。 これは、またあとで考えてみたいと思います。 以下のりしろ。

  • ジャズ (ロックやポップスに比べればマイナー) ⇒ テール? ⇒ ネット技術によるアクセシビリティの向上。 今回のイベントに参加していたアーティストの人たちが、ほぼ全員自分のウェブサイトを持っていることに気づいてこれまたびっくり。
  • 生産技術の低コスト化と消費の多様化 ⇒ ジャンルに関係なく「大ヒット」は今後減る傾向 ⇒ マイナーながらも手堅い成功というパターンの増加 ⇒ この傾向はジャズ音楽をやっている人たちにとってはプラスでしょう。
  • レーベルや「業界」に頼る必要性の低下 ⇒ 自分で作って自分で売り出すことが簡単にできる (MySpace.com のインディーズ音楽とか) ⇒ レコード会社などの「中間業者」はもうあんまり必要がない?
  • オリジナリティ重視、即興性重視の傾向 (誰かがやっている音楽の繰り返しに魅力はなし) ⇒ 「繰り返せない」価値 ⇒ ネットで人は集めるが、コンテンツはライブで消費する ⇒ デジタル化の不可能な部分が残る


それではまた。