地域を元気にするIT、元気にしないIT


鎌倉という地域の魅力を伝える treep というサイト (アロハス株式会社が運営, 代表 吉原 亘さん, 平成17年10月3日設立) は、地域を元気にするためのサービスとして一つの模範的な例だと思う。 基本的には観光と物販なんだけど、LOHAS の思想に沿ったプレゼンテーションはかなり魅力的。

treepのコンセプト
A.地域生活者のライフスタイルに触れる旅
B.環境にやさしく健康にいい旅
C.地域の文化・芸能に触れる旅


treepの提供するサービス
1.地域密着型観光情報配信
2.ワークショップ開催
3.EC/通信販


メールマガジンの配信もやっていて、これは観光地としてのリピーター客をつくっていく方法として堅実。 一度訪れたあとも、商品や情報を通じて、その土地との接点を感じることができる。 このメールマガジンの宣伝文が「鎌倉観光情報や体験型ワークショップ開催のお知らせ、地元で愛される健康と環境に配慮されたLOHASな商品情報などを届けします」、とイイ感じ。


この方法をマネして、「いや、LOHAS なライフスタイルなら ウチの地域こそがいちばん」と名乗りをあげるようにサイトを立ち上げる地域が たくさん出てくるんじゃないかな。 けど、一貫したプレゼンテーションと継続的なワークショップ開催などを通じて特色を出していける観光地は、どちらかというと名前が知られたメジャーな場所に限られるのかもしれない・・。 軽井沢、箱根、伊東、湯沢、黒姫、南部、伊勢志摩、神戸、吉野、橿原神宮、奈良、など、歴史のある観光地ならば 共通した戦略で リピーター客を作っていくことができるんじゃないかなと思う。 イギリス、アメリカ、ドイツ、フランス、台湾、韓国、中国など海外からのお客さんを歓迎できるように、地域情報を英語や中国語でがんがん発信していくのも強力な手段かもしれない。 そういえば、少し前に、台湾の人たちのあいだで日本の温泉がブームになってたっけ。




この treep のサイトのことを知ってすぐ、作家の斎藤 純さんが、故郷の岩手県盛岡市で暮らしながら、本の購入にアマゾンを使うことのちょっとした後ろめたさについて述べているのを見かけた。

ぼくは地元の書店で本を買うように心がけているのだが、ほしい専門書が店頭にあることはめったになく、ほとんどが注文となる。書店に注文した場合、入手するまでに最低でも一週間はかかる。ところが、アマゾンのようなインターネット・ショップだと早ければ翌日、通常は三日以内に手元に届くため、どうしてもインターネットで購入しがちだ。CDについても同様であり、悩みが尽きない。


別にこんなことで悩む必要はないとおっしゃる方も多いと思うが、「まちづくり」の市民活動に参加し、中心市街地活性化という課題に取り組んでいる身としては、地元の商店で買い物をしないことに罪悪感めいたものを覚えないわけにいかない。気分としては「仕方なく」インターネット・ショップを利用していると言っていい(ちなみに、市民活動を行なう上ではメール、ホームページ、ブログ、メーリング・リストなどが駆使され、有効に活用されている)。


これって、ファミレスとコンビニによる郊外の風景の均質化の問題と同じ。「安くて便利」を求める結果、自分の暮らしている地域が空洞化してしまう。 世界のマクドナルド化の話と同じことが、ネットと地域の関係でも起こる場合がある。


対症療法として、地域の小さな書店がアマゾンと競争できるぐらいに充実したサイトと迅速な納品のサービスを提供すればいいのだろうか。 たしかに、アマゾンのビジネスモデルの拡張としてこれは技術的には可能だと思う。 アマゾンの機能を丸ごと ASP サービスとして化粧直しして、地域の書店のサイトの機能の一部として提供すればよい。 地域の書店とアマゾンが互いに win-win な関係を築くことはあんまり難しくない。


けれど、それはなんだか本質的な解決ではないように感じる。 全国の町それぞれに、似たような機能が重複していることは、いったい効率的なのか非効率的なのか。 物流、価格、商品情報の交換、検索性という点で非効率的という見方もできる。 しかし、信頼、アテンション、贈与原則、という視点で捉えなおしたときに、ローカルであるほうが効率的である、という論理も成り立つと思う (まだあんまり深く考えてないけど)。 グローバルなサービスよりも、ローカルなサービスのほうがよい、と顧客に思ってもらうためには、価値観・ライフスタイル・信頼感の売り込みをつづけていくことが必要。


地域の中の人たちに対しては、目立つ度合い、という点で、全国/世界に展開されるグローバルなものに 負けないように、地域広告の戦略が超重要。 地域の外の人たちに対しては、「うちの地域はこんなに魅力的です」ということを 観光、グルメ、商品、人 (ワークショップ) を通じて がんがん伝えていき、 その人たちが地域を訪れてくれたときに、ファミレスやコンビニ以外の商店も訪れやすいように誘導すべし。