地球温暖化


東京はいま蒸し暑い日々が続いているのでしょうか。


シアトルは快晴が続き、夏が始まっています。 この時期は日没が遅く、夜 9 時すぎまで日が暮れません。 今日も日中はとても暑く、仕事の後、 Lake Sammamish State Park に散歩に行ってきたのですが、夕方の湖畔で暑さしのぎに水遊びをしている人たちをたくさん見かけました。


私がシアトルを初めて訪れたのは 1999 年の夏、仕事で 3ヶ月間滞在したのが最初でした。 生まれて初めての海外での仕事にドキドキ・ビクビクしっぱなしで、英語もろくに喋れず、 目に入るアメリカの景色すべてが新鮮に見えていたあの頃。 今となっては思い出の中の日々。 けど、あの頃の夏ってこんなに暑かったっけ・・・!?




最近シアトルで、地球温暖化問題を訴えるドキュメンタリー映画 "An Inconvenient Truth" が公開されました。 以前からこの映画には興味があったので、観てきました (6/24/2006 Sat 21:55 Guild 45th Theatre)。


主演しているのが、2000年の大統領選挙でブッシュ大統領と選挙で争ったアルバート・ゴア (Al Gore) 元副大統領ということもあって、いろいろなメディアで話題になっています。 温暖化問題は、彼が若いころから注目していたテーマだそうです。


とくに 1950年以降、空気中の温暖化ガス (二酸化炭素など) の濃度は急激な増加を続け、それと共に平均気温も上昇を続けている。 キリマンジャロからは万年雪が消えている。 世界各地で、氷河が溶けてなくなっている。 北極では氷の減少のために溺死したホッキョクグマが史上初めて発見されている。 海水の温度の上昇により、大規模な台風が以前よりも頻発している (例: 2005年にアメリカを襲ったカトリーナなど)。 降水のパターンが地球規模で異変しており、結果として洪水と旱魃が世界規模で頻発している。 南極とグリーンランドの氷がいま、異常な速度で溶けていっている (海面の上昇が起こる) ・・・。




この映画のメッセージはシンプルで、「私たちアメリカ人は立ち上がって、この状況を何とかしなければならない。 これは政治の問題ではなくて、倫理の問題である」というもの。 世界の温暖化ガスの 30% 以上を排出し、京都議定書への批准を頑固に拒否しつづける国の内側から こういう声が上がってきたことは、良いことだと思います。




この映画を観てまず感心したのは、そのプレゼンテーションの洗練と、Al Gore 氏の語りの力強さ。 スライド資料、観測データ、科学イラスト、地球環境の荒廃を示すさまざまな写真、動画フィルム、アニメなどが組み合わされたビジュアルは、それだけでも説得力があります。 下手なプレゼン技術の教科書を読んでいるヒマがあったら、この映画を見て優れたプレゼン手法を盗むほうがよっぽど効率がいいのでは、と思わせられるほどです。


ですが、何よりも私の印象に残ったのは Al Gore 氏の語り口調の上手さとユーモアです。 この映画は最初から最後まで、彼自身の語りがメインで、彼の声以外の音といえば控えめな音楽と、時折の背景音ぐらいですが、この映画には たくさんの知的な刺激がつまっていて、まったく飽きさせません。 なぜか この映画に登場する Al Gore 氏は、以前の 大統領選のときよりも ずっと自信にあふれ、カリスマ的に見えるようにも思います。




もちろんプレゼン技術だけじゃなくて、伝えられている内容も非常に重要なメッセージ。 いくら重要なメッセージでも、伝え方が稚拙だと多くの人には届きませんが、この映画は間違いなく超一流の伝え方がされていると思いますので、きっとこのメッセージは多くのアメリカ人の耳に届くことでしょう。 実際、アメリカの石油会社は この映画のインパクトを恐れて、この映画のあら捜しをして批判するキャンペーンに資金を投入し始めたそうです。


たとえば、今すぐ私たちが消費者の立場でできることとして、以下のような提案がされています。

  • 輸入された食べものではなくて、地元で作られたものを食べよう。
  • 冷凍された食べものではなくて、生のものを食べよう。
  • オーガニック食品を食べよう。
  • 木を植えよう。
  • エネルギー効率のよい家電製品や自動車を使おう。


内容の濃さと 飽きさせない表現、説得力のあるデータの提示など、ここ数年のドキュメンタリー映画の中では間違いなくヒット作だと思います。 日本でも、ぜひ多くの人に観て欲しい映画です。 いままで 私自身はあまり温暖化問題のことを知りませんでしたが、この映画を観て、もう少しいろいろなニュースに注意を払って温暖化問題について学んでみようと思うようになりました。






そういえば、1979年のスリーマイル事故以来 30年ぶりになるアメリカの原子力発電所を、 日立が GE と共同で建設するそうですね。


温暖化ガスを大量に撒き散らす火力発電、温暖化ガスはゼロだけど廃棄物の処理にコストがかかる原子力発電。 Perfect Answer のない中、きっと地道に慎重に、一歩一歩 より良い選択を探していくことが大切なのでしょう。 どうやら、GE自身は原子力発電のコア技術開発は担当せず、 Reactor などのコア技術は全面的に日立の技術に依存する方向で計画されているようです。 がんばれ日立。