仕事の可能性 2/26/06 版


2/19/2006 に東京に着いて以降一週間のあいだ毎日、東京で複数の友人や知人、社外のキャリアコンサルタントと会って話していて、いくつか鍵になりそうな言葉を学んだ。 また、人に会って話すことで、自分の中のストーリーを発見することも多かった。


以下は いくつかのテーマのメモ。


■技術からビジネスへのシフト (短期ゴール)


今まで私は技術一本槍のエンジニアだった。 これだけでは社会への影響の幅において限度がある。 次のステップは「ビジネス(経営)もわかるエンジニア」であり、将来の起業を視野に入れて幅を広げる。
 職種の選択肢はおそらく開発リード、プロジェクトリード、プロジェクトマネージャー、ITコンサルタント、ブリッジSE、マーケティングアナリスト、ビジネスアナリスト。


■プラットフォームからアプリケーション/サービスへのシフト (短期ゴール)


今までの私の携った製品は、Windows や Office といった、誰もがインフラとして使う製品。 これは大規模開発の手法を知るには良い選択だったが、これだけでは顧客との接し方において自分に合った関係を探すのが難しい。

 今後私が興味があるのは、顧客・一般消費者が直接目にするアプリケーションまたはサービス。 B2B よりは、B2C / C2C の仕事のほうに、自分は充実感を感じる。


■モノづくりからヒトづくりへのシフト (長期ゴール)


今までの私は「モノづくり」にのみ集中し、作られるモノの社会的意味にはあまり興味がなかった。 が、シアトルでの生活を通じ、日本をもっと元気にしていきたいと考えるようになった。 なぜなら、いたるところで進行している「世界をアメリカにする計画」に私はいくつかの点で同意していないから。

 今後私は、技術+モノづくりの領域から次第にシフトして、ヒトづくりの領域へと向かう。 B2C / C2C サービスの提供を通じて、顧客に「楽しい」「元気」を届けることができればと思う。 顧客だけではなくて、仕事で接する職場の人にも「楽しい」「元気」を仕事を通じて感じてもらえるプロでありたいと思う。


アメリカから日本へのシフト (短期ゴール)


今まで自分は、「一流のエンジニア」になるためにグローバルな舞台を目指し、日本からアメリカに飛び出した。 たしかに、自分一個人のスキルは向上した。 が、周囲に影響を与えていくことが必要な場面においては、自分がアジア人であることは大きな不利だと感じた (たぶんこれは部署にもよる)。 また、アメリカ企業はグローバルを謳ってはいても実際にはアメリカの市場が第一であり、私が目にしたのは真のコスモポリタン的発想というよりは「たまたま運の良かった井の中の蛙」的発想のほうが残念ながら多かった。 というわけで自分の中で「グローバルなのはいいことだ」「アメリカはグローバルな国だ」という幻想は消滅。

 これを言い換えれば、2000年ごろにアメリカに行こうと思ったときの目標はおおむね達成。 これ以上アメリカに居てもあまり自分の成長は望めない。 べつにアメリカが嫌いというわけじゃないけれど、これからの自分が成長できる場所は、日本。


■検索技術と B2C / C2C ビジネス (短期な話題)


Google News の登場のときにニュースサイトの編集者が「反則だ」と危惧したように、検索技術と機械的な情報の編集技術は既存の B2C/C2C ビジネスを破壊していくのではないかという見方がある。 たとえば、商品比較型検索技術を既存のEコマースサイトが警戒するように。

 たしかに、従来の人手による重み付けと、検索技術による自動的な重み付けがメディアやコマースのいろいろな場面で混在するようになると思う。 けど、人手による重み付けの必要性がなくなることは絶対にない、と私は考えている (理由: 人口知能の挫折, 複雑性の縮退(ハーバーマス), 創造的リンク発見の計算不可能性)。

 検索技術と自動的な重み付けは、これからのネット上でのサービスの基幹技術の一つとして広く利用されることにより、人手による重み付けを下から支える存在になるはず。 言い換えれば、Google, Yahoo, Microsoft が検索技術のプラットフォーム・シェア争奪戦を繰り広げるのとは違うレイヤで、無数のネットサービス企業が さまざまなアプリケーションをそれらの検索技術を利用して開発していくだろう。

 ナンバーワンの (広い顧客の心をつかむ) 情報編集者、オンリーワンの (独創的な) 情報編集者の仕事がなくなることはないが、検索エンジンと同等以下の仕事しかできない手作業編集者は淘汰されるだろうと思う。


■自分の役割 (短期・長期)


自分がやろうとしていることの長期的ゴールは日本における人づくりであって、これは大昔から無数の人が IT 技術を使わずともやっていたことでもある。
 この長年の営みに、自分はIT技術をツールとして使って参加する一人になろうと思っている。

  • 短期的には、ネットにおける B2C / C2C サービスを提供して顧客の暮らしに彩りを添え (と同時に収益も上げる)、「元気」「楽しい」をキーワードに「ビジネスもわかるエンジニア」として貢献。
  • 長期的には、現在の検索技術、ソーシャル・ブックマーク技術、ブログ/SNSのようなオンライン・コミュニティ運営、それに連動した広告技術、Recommendation技術を発展させて、「人とチャンス」の出会いサービスを提供。 ここでいう「チャンス」は就職口というような狭い意味ではなく、人生を展開させていく教育・学習・経験の機会全般を指す。 これは、現在のリクルートなどの会社が各種媒体で提供しているようなサービスにやや近いかもしれないが、もっとマーケットを絞ったものになるかもしれない (たとえばシニア世代の中の○×な人たち、とか、若年世代の中の◎△に興味のある人たち、とか)。 従来の機械的なマッチングサービス (リクルート・エイブリック、インテリジェンス、など) とは質的に異なるタイプのサービスが、現在の検索技術の応用により可能になると思う。
  • 「人とチャンス」の出会いサービスが軌道にのったら、その次はよりステージの高いテーマ、「人と、その人自身のパッション」の出会いサービスの提供に取り組む。 こうなってくるともはやIT技術が役に立つのかどうかさっぱりわからない。 けど、自分の中にあるパッションとつながるのは今の時代簡単なことではないし、今後 これが簡単になる見通しはない。 人材育成、教育、行政、地域を含めたサービスになっていくだろうと思う。


(過去のメモへのリンク)
2/8/2006 社会起業と事業型NPO
http://d.hatena.ne.jp/matsuuchi/20060208#p1
1/13/2006 仕事の可能性 1/13/06 版
http://d.hatena.ne.jp/matsuuchi/20060114#p1