チープ革命が中間業者に迫る変質


チープ革命についての興味深いニュースが 2 つ。


これらの動きは、いわゆる「中間業者」に私たちが期待するバリューの変化をますます加速するだろう。 以下、この2つのニュースをめぐっての中間業者の変質についての雑感:

  • 中間業者が不要になることはないけれど、 「売る」代理しかできないビジネスは退場し、「買う」代理のできるビジネスが台頭するという流れはますます加速する。
    • 形骸化した既得権益を守ろうとする中間業者は、アクセス解析という技術が持つ容赦ない合理化の力で退場させられ、顧客と提供者をより高い効率で (ROI に根ざした指標により) マッチングすることのできる中間業者どうしの競争が熾烈化するだろう。 これは最終的に、顧客と提供者の両方にとって利益がある。
  • いわゆる「ECポータル=玄関口」の外のチャンネルによる商取引 (アフィリエイト + ドロップシッピング) が次第に増大していくことで、 物販だけに特化した巨大なショッピングモール型サイトは、他の (これまで eコマースと関連がないと見なされていた) コンテンツサイトと競合するようになっていくのではないか。
    • eコマースサイトが、商品ごとにコメント欄や口コミ機能を充実させていく一方で (商品⇒コンテンツ) 、 「商品を買う」以外の目的でネットを歩き回っている人が、たまたま読んだり見たりしていたコンテンツの中で紹介された何かを注文したりする (コンテンツ⇒商品) という場面も増えていくだろう。
    • 細分化されたニッチな市場におけるコンテンツ展開や商品取引のほうが、それぞれの顧客 (多くの場合はおそらく個人) にとってはより「自分にとって楽しい」エクスペリエンスであり、万人向けの大きなポータルは「平板すぎてつまらない」エクスペリエンスになってしまうというケースが増えてくる予感がする。 ポータルへの大量集客というビジネスがなくなることはないだろうが、それだけがビジネスの選択肢ではない。 アフィリエイトと同じように、ドロップシッピングロングテール領域におけるビジネスを支える力のひとつになりそう。
  • 高機能なアクセス解析は、高価であり、大規模な企業を対象としている。 が、これがマクロなレベルでの「中間業者」ビジネスのムダを減らし、メガ広告キャンペーンなどの収益性を上げていくことで、その周辺やニッチに展開する中小ビジネスの底上げに貢献する可能性がある。 高付加価値で高価格なサービスを提供することで、じつは経済のネットワークの他の部分での全体的な低価格化に貢献する可能性がある。
  • コンテンツ連動型広告、キーワード連動型広告と同じ原理が、ドロップシッピングサービスの提供にも応用できる。 このドロップシッピングサービスの「価格は販売する側が決定」という特性は、オークション (買う側がなるべく高い価格を提示して入札)、逆オークション (受注する側がなるべく低い価格を提示して受注) のサービスと連携する可能性があるため、 多くの商取引における価格決定のメカニズムのリアルタイム化が実現可能なのではないか。 また、自分の「集客実績」を何らかの形で 取引材料として用いることにより さらに大きなバーゲニングパワーを手に入れる、というような、いままで人手を介して行われていた交渉の一部が システム化されて、 そのような「ネゴシエーションサービス」をオンラインで提供して手数料を稼ぐという新しいタイプの「中間業者」が現れてくるかもしれない。


チープ革命は、とくにロウアーミドル層・ロウアー層の人たちの暮らしを豊かにしていくために重要。 これまでの集約型ビジネス、高コスト体質のビジネスの仕組み自体に大ナタをふるって効率化することで、より低価格ながらも高品質・多様な商品とサービスを提供していく潮流は、チープ革命の進展と相関しているはず。


また、アフィリエイトドロップシッピングの流れは、個々の決済のマイクロペイメント化・分散化の流れを推し進めると同時に、 販売組織の境界も曖昧にしていく。 極端な話、「中間業者はぜんぶ個人、顧客も全員個人、提供者も家族でやっている零細企業」というような場合には、いわゆる「組織による安全保障」がだんだん難しくなってくる。 このような分散化されたミクロな取引における安全を保障することが、インフラ提供者や金融機関の課題となっていくように思う。 また、このような形でビジネスを行う人たち (場合によってはこれに家計を依存する人たち) が増大するにつれて、その人たちに対する福祉や社会保障は制度としてはたして整備されているのだろうか。


(まだあんまりよく考えてないけど、これらの技術が 非営利組織にどう影響するか、という点に考察してみるのも興味ぶかい。 アフィリエイトドロップシッピングアクセス解析などは、非営利組織の運営においても大いに役に立つ技術であると思う。 寄付金の募集、効率のよい購買、非営利サービスの告知、協賛者の増大など多くの場面において、営利組織で用いられているマーケティング手法が使えるように思う。)