教育サービスと市民社会について雑感


今年10月に東京・豊洲にオープンする予定のキッザニアという施設は要注目だと (勝手に) 思っている。 その運営会社の社長である住谷 栄之資 (すみたに えいのすけ) 氏が 先日、ニュース番組に登場していた (日本テレビ社の Podcasting "汐留リーダーズEYE"、4月28日号)。


住谷氏は、もともと海外レストランチェーン「Tony Roma's」「Hard Rock Cafe」「カプリチョーザ」などを日本に持ってきて成功していた人物とのこと。 その彼がメキシコのキッザニアのことを知り、これを日本に持ってこようと決意して2年前 (2004年) ごろから資金なし・社員4名の状態で出資者・スポンサー集めを開始。 子供たちが「遊ぶ」だけではなくて、いろいろな職業的な体験ができるようになっている教育的施設に、こうして日本で賛同者を得ることができたという話は なんだかいいなあと思った。 かつてのバブル時代のテーマパーク (「遊び」中心) の多くが事業として成功しなかったのに比べて、こういう公共的な意味も強い施設は事業としても成功しやすいかもしれない。 応援したいところ。




もう一つ教育について考えさせられた最近のニュース。 日本ビデオニュース社のマル激トーク・オン・デマンドの 4月21日号の個人情報保護法についての話は、あらためて私たち市民が何を知るべきなのか、について考えさせる内容だった。以下要約。

  • 個人どうしのつながりが薄れ、公権力の外にある共同体が弱まっている傾向が、同時に「何かあったらすぐに公権力になんとかしてもらおうとする」傾向を強めている。 宮台真司氏の言葉でいう「くれくれタコラ」、もっとくれ、誰かなんとかしてくれ、「お上」がなんとかしてくれ、という態度。 地域の中での相互不信の増大。
  • この傾向は、権力側から見ると、都合がいい。 監視社会化がすすむことで、公権力や営利事業者が市民の権利を侵害する危険がふえている。 不安のポピュリズムにより、危険な権益が「民主的」に支持されてしまう可能性がある。
  • 公権力や営利事業者の横暴を監視する役割は、もはやマスメディアには期待できなさそう。 横暴を予防していくには、官僚と同じぐらいの能力を持った人たちが市民セクターに必要なのではないか。
  • 公権力でも営利ビジネスでもない、「市民セクター」がもっと強くなること。 公権力の外にある共同体による人の信頼関係を強めていくこと。 これは今後、とても大切。 「国家」以外にはバラバラの個人しかいない、という状況になってしまうと、これは権力の専制に拍車をかける。
  • 日本には現在、「プライバシー権」を明文化した法律が存在していない。 (個人情報保護法は、じつはプライバシー保護法ではない。なんてこった。)


教育の話は、私たちは どういう社会に住みたいのか、という話でもある。 難しい問題のことは統治権力にぜんぶお任せ。 難しいビジネスの問題は会社の上司にぜんぶお任せ。 自分たちは「ガマン」して「お上に奉仕」していれば、お気楽に楽しい毎日が過ごせる・・・。 そういう社会に、私は全く魅力を感じないなあ、ということを、マル激トーク・オン・デマンドの番組をみて改めて思った。




と、ずいぶんマクロなことを考えていたら、ITと教育がらみのミクロなニュースが目にとまった。

これに参加している教育コンテンツ提供企業はというと、アルクイングリッシュタウン、語研、ナガセPCスクール、TAC・・・。 なんだ、語学 + パソコンしかないのか。 この内容には私は興味を感じない。 けど、教育コンテンツの配信という事業には少し興味があるので、機会があったら こんど東京に行ったときにネットカフェを覗いて どんな感じなのか調べておこう。




語学やパソコンなどの実用的なスキルよりも、もうちょっとメタな知識に興味を持った人たちのための教育サービスって、学校しか提供していないのかな。 社会人向けのいろいろな教育サービスをざっと見渡してみると、こんな分類になるんだろうか。
 (1) MBA系 (経営学)
 (2) スキル系 (語学、プログラミング、etc)
 (3) 自己啓発・モチベーション系
 (4) 社内トレーニング系
 (5) 一般学術系 (社会学、心理学、生物学、物理学、歴史学、経済学、etc..)
 (6) 生活系 (料理)
 (7) アート系 (絵、お花、etc)


私自身が ふだん強い興味を感じる分野は (5) で、時事問題について考えるためにもこの分野は重要だと思うんだけど、この学習を続けるには「一人で本を読む」か「もう一回大学に行く」しかないんだろうか?


シアトルで暮らしながら、興味を感じた著者の Book reading event に出かけたり、たまに University of Washington の公開講義に顔を出したりしていたような形で、「ちょっと外に出かけながら」時事問題の背景について広い学習を続けたい、と思っている人は 意外と私以外にも いるのじゃないかなあ、と考えてみたりもする。


社会人が、商業な情報ではない マトモな知識を学んでいくことは、マクロな話でいう市民セクターの強化のためにも重要、なハズなんだけど、今現在の私のような立場だとまだちょっと中途半端なのかなあ。 けど、こんにちの IT 技術をもってすれば、いろいろ新しい官・学・産の交流のチャンネルをつくっていけるんじゃないかなあ。 キッザニアは IT というわけではないけれど、こういうチャンネルづくりそのものを何らかの事業としてやっていくことができないものか、と思う。


たとえば身近な例として、以下のようなイベントの情報を、たとえば東京という地域で、一覧できるような形で配信してくれているサービスってないんだろうか。


もし今、誰もこういう情報編集サービスをやっていないんだったら、自分でやってみるのもいいかな、と思う。 こういう情報編集・配信そのものがビジネスになるかどうかはわからないけど、少なくとも私はこういうサービスがいま、とても欲しい。